映画『飛行機に乗っていたら墜落して、凶暴な人食いライオンのいる原野に放り出された件』の感想・ネタバレ:獲物はお前だよ!
ムクンダ・マイケル・デュウィル監督の映画『飛行機に乗っていたら墜落して、凶暴な人食いライオンのいる原野に放り出された件』を観たので、作品情報につづいて感想を書き残しておきます(すぐ下はネタバレなしの感想)
視聴方法はGEO(ゲオ)の店頭DVDレンタル。本タイトルは先行レンタル品となっております。
ラスト・結末までの簡易的なネタバレは「あらすじ」の項にまとめているので、鑑賞後のおさらいや予習用に読みたい方はそちらを参照のこと。
映画『飛行機に乗っていたら墜落して、凶暴な人食いライオンのいる原野に放り出された件』の作品情報
監督・脚本
- ムクンダ・マイケル・デュウィル
映画『逃走車』(2012):監督・脚本
役名/キャスト
- アンドリュー/ライアン・フィリップ
映画『リンカーン弁護士』(2011):ルイス・ルーレ役 - グルン/エミール・ハーシュ
映画『イントゥ・ザ・ワイルド』(2007):クリストファー・マッカンドレス役 - スー/ミーナ・スヴァーリ
映画『アメリカン・ビューティー』(1999):アンジェラ・ヘイズ役 - ターボ/ジェレミー・タルディ
予告編(字幕版)
あらすじ
アフリカを訪れていた米国人医師アンドリューが、突如、米国に戻るよう現地の者に忠告される。米国人を人質として狙う過激派集団にアンドリューの存在が知られたためとのことだった。アンドリューは妻のスーと共に空港へ向かう。 操縦士に高額の運賃を要求されながらも、それを承諾し、自家用機に乗り込むことができたアンドリューとスー。2人以外の乗客は、旅行で訪れていた3人の若者と現地出身のガイドだった。 操縦士を含む7人が乗った自家用機は無事に離陸するが、しばらくすると機体が大きく揺れ、墜落してしまう。自家用機が落ちた場所はアフリカの荒野。アンドリューとスーは命こそ無事だったものの、墜落により旅行中だった女性が死亡する。やがて、アンドリューたちは、自身のいる場所が、ライオンやヒョウなどの凶暴な動物が生息する保護区だと知り、愕然とする。
- 映画『飛行機に乗っていたら墜落して、凶暴な人食いライオンのいる原野に放り出された件』ラスト・結末のネタバレ(※押すと開きます)
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墜落した際、飛行機の残骸に脚を挟まれ、身動きが取れなくなってしまったスー。彼女のためにその場に残ったアンドリュー以外のメンバー、操縦士のグルン、ガイドのターボら数人は助けを求め、荒野をさまよう。
しかし、それは徒労に終わっただけでなく、仲間割れをも引き起こし、単独行動を取ったメンバーはライオンの餌食に。待機していたアンドリュー側も一瞬のうちにライオンの襲撃に遭い、スーを失う結果となってしまった。
さらに一人の犠牲を出して明け方、今度は土着の過激派集団による襲撃を受ける生存者たち3人。不幸なことに、集団は飛行機の残骸から象牙などの密輸品を見つけてしまう。それはグルンが秘密裏に積んでいたもの。飛行機の墜落は密輸品による重量オーバーが原因だったのだ。
過激派集団はアンドリューらを犯罪者と見なし、まずは彼らの肩を持っていると判断したガイドのターボを殺害。アンドリューとグルンを拘束するが、グルンは監視役が居眠りを始めた隙を見計らって彼らを殺害し、2人は脱走に成功する。
しばらく荒野をさまよったのち、2人は少し先に集落を発見。しかし、またもやここでライオンの猛追を受け、さらにはサソリによる脅威にも脅かされることに。
グルンは覚悟を決めた。そして、改心した。このとき満身創痍となっていたアンドリューを逃がすため、グルンは自らおとりとなって、アンドリューを逃がす時間を作り、死亡した。
集落までもう少し。しかし、そんなアンドリューの前に今度はハイエナが現れる。決死の覚悟を持って対抗しようと試みるアンドリューだったが、そのとき、彼らのあいだに一条の稲妻が走る。ハイエナは逃げ、辺りには恵みの雨が降り注いだ。
神は彼を見放さかったのか。夫妻と懇意にしていた現地の民が救出にやってきた。アンドリューは彼らの姿に、熱心にキリスト教の教えを広めていたスーの姿を重ね見た。
映画『飛行機に乗っていたら墜落して、凶暴な人食いライオンのいる原野に放り出された件』の感想
物語の舞台はアフリカ。
現地で慈善活動を行うアンドリューとスーの夫婦は、過激派集団ボコ・ハラムが近づいてきているとの報せを受けて一時避難を試みる。
しかし、輸送のための小型飛行機を操縦する男グルンはとんだ小悪党であり、アンドリューらからは搭乗料をぼったくったうえ、自らは機内に密輸品を積んでいた。
その結果、重量オーバーとなった飛行機は墜落。アンドリュー夫妻やグルン、そのほか搭乗客の面々は遭難を余儀なくされ、獰猛な野獣、過激派集団、牙を剥くサバンナの大自然といった脅威に苛まれる……
略して『飛行機に乗っていたら墜落して、凶暴な人食いライオンのいる原野に放り出された件』。
……あぁ、物足りない。なにが物足りないかというと、味わえるところがなくて物足りない。まず、邦題からしてこれ、我々のような映画ハイエナが食らうべき肉を削ぎ落としてきていますよね!と言ってやりたい。
ゲオ先行レンタルといえば、誰が言ったか「裏・未体験ゾーンの映画たち」。
日の目を見ることなく、埋もれていくはずだった作品をすんでのところでサルベージし、日本市場に供給してくれる配給会社プルークさんはまさに拾う神的存在だといえる(以降、プルーク神と呼称する)。
我々、映画ハイエナはただ、与えられた作品に感謝をしながら、新作だけど7泊8日のうちにガブガブといただいては、同じ群れの仲間と「今回のはウマいね」「今回のは後味が良くないね。まぁ、ボクは好きだけどね……ふふっ」などと隅のほうでコソコソと話し、楽しんでいる日陰の存在に過ぎない。
それはわかっている。わかってはいるんだけども、この邦題は……タイトルを見て中身を予想するという楽しみすらをも奪ってはいないか。健康で文化的な最低限度の生活、これを脅かしているんじゃないか。
今年に入って『2年前、行方不明になった学生たちが撮影した卒業制作の映画を観てみたら、森で秘密の儀式に巻き込まれていた話』、『不良ムスメが盗みに入ったら、そこが食人ファミリーの家だった話~そこにマフィアが乱入して更に状況が悪化した』につづいて、3作目のあらすじ説明系ラノベ風タイトルというのもさすがにやりすぎ感がある。ドンキのPBみたいにしたいのか?
しかも、あろうことか本作の原題は「獲物」を意味する『Prey』ときた。これはこれでシンプルすぎるようにも思える。ただ、本編を観るとこれはド直球ながらに的を得たタイトルであって、これこそが作り手としても意識していたポイントなんだろうなぁという感じ。
荒野のど真ん中、飢えた猛獣たちにとってアンドリューらは生命を繋ぐための大事な「獲物」。逆に狩りによって生計を立てている者や密猟者にとっては、肉や皮、牙などが高値で売れる獣もまた「獲物」。そして、じつはこんなところにノコノコと、やれ慈善活動だのなんだのとやってくる外国人も、現地の犯罪者や過激派集団からしてみれば、スリや強盗、身代金要求のための恰好の「獲物」と、さまざまな視点から見た「獲物」が重なる構図となっている。
だからといってそれだけで「うわぁー!おもしろーい!」と爆発的火力、まさに傑作という評価になるわけではないのだが、少なくともただ『獲物』というタイトルに牙を剥いたライオンがジャケットに映っているだけであれば「これはこのライオンとの殺るか殺られるかがメインのコンテンツとなるのかな?」とイメージしたであろう鑑賞者に対して、のちのち「あっ、獲物ってそういうね?なるほどね~。ふんふん」と作品のちょっとした広がりを感じさせることはできたはず。
素朴極まるこの作品からそのワンパンチを奪った罪は重い。こうなるとあとがキツい。本当に見せたいところは「じつは獲物ってね……」というところだけだったのか、登場してくるライオン、ハイエナともにその捕食シーンを映してはくれないし、過激派集団との戦闘でもそれは同じ。
これだと『飛行機に乗っていたら墜落して、凶暴な人食いライオンのいる原野に放り出された件』という邦題を見てレンタルしたひとたち(がいるかは不明だが)は満足しないだろう。あ、え……もしかして、こんな邦題に引っかかってレンタルするお前らが「獲物」だよ……って??
ぐわー、やられた!!(棒)
唯一、いや、唯二、よかったのはアンドリューらを拘束した武装組織のメンバーが2人とも居眠りし始めたところと、クライマックスの雷だろうか。
生きるか死ぬかの瀬戸際にいるわりにはあまりにも緊張感がなく、ナンジャソレ的笑いとしてクスッと来てしまうが、これはむしろ観てもなにも感じない映画よりかはヘンテコでも意外性があったほうがいいよねという判断。
捕食シーンを描く気がないのなら、原野に放り出されたのちにじつはそこが宇宙船の燃料補給地で、アブダクションされたヒトやライオン、エイリアン入り乱れる大混戦が勃発してしまった件。を全年齢対象でも描いたほうが面白いと思う。
方向性が違うのは百も承知だけど……邦題であらすじのほとんどを説明されて、その後の展開も予定調和はつまらないので!意外性だよ意外性!
※けっきょくプルーク神ってあれから使わなかったな。